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2016年印象に残った作品 その3 [音源発掘]

正月休みも終わり、2017年も早10日を過ぎようとしている今、新しい年も本格的稼働を開始をしたところ。

となれば当ブログの方も、いつまでも正月気分で惰眠を貪っていることも出来ないなという訳で、遅ればせながら私の方もようやく活動を開始としたところ。

その新年最初の記事は、昨年末、最後の記事で予告した2016年印象に残った作品その3のジャズ編。

昨年は、いくつかの作品は持っているものの、それまでどうも肌合いが合わずあまり聴いてこなかった、50年代に現れたアーティストの作品を中心に聴き直してみようということで始め、Zoot Sims、Lee Morgan、Charles Mingusなどを聴き、あらためてその良さを確認しつつ、かなり嵌ってしまう結果となっていたのですが、それらの作品については、また別の機会に取り上げることとして、今回は、現在も活躍を続けているアーティストの昨年お気に入りとなった作品から、そのいくつかを選んでみることにいたしました。


その最初の作品はこちら

Collective Portrait.jpg


トランぺット奏者 Eddie Hendersonの2014年の作品”Collective Portrait”です。
1971年に、当時最先端のクロス・オーバー路線をひた走るHerbie Hancockのグループにて、レコード・デビューしたHenderson、70年代はエレクトリック化したMiles Davisばりの演奏で一名をはせた彼も、今や76歳。

彼が現れた当初、私は、Clifford Brownのスタイルを継承しようとするトランぺッターが多い中、Miles のスタイルを継承する希少なトランぺッターとして興味覚え、いくつかの作品を聴いてみたのですが、最初に聴いた時は悪くはないと思うものの、繰り返し聴くとそのうち飽きを覚えてしまうそのサウンドにコマーシャリズムの悪臭すら感じるようになり、以後、彼の作品は聴かなくなってしまい、おりしも、Henderson自身も本来の精神科医としての職務に専念するためシーンから遠ざかってしまったため、もう彼を聴くことはないなと思っていたのです。

ところが、90年代になって現在のトランペッターの演奏によるジャズ史上に名を残した伝説のトランぺッター達の名演奏集ともいう企画作品に出会い、その演奏者としてNicholas PaytonやLew Solofといった、この時期名をなしていた名トランペッターに混じってHendersonの名を発見したことで再び彼のトランペットを聴いてみる気になったのです。

しかし、PaytonやSolofは、どんな演奏するのか、そのイメージが湧くのですが、フュージョン畑での演奏しか知らなかったHenderson。

果たして先の二人に見劣りすることはないのか。

そんな、杞憂を抱きながら彼の演奏にプレヤーの釦を下したのですが、聴こえてきたのは、フュージョン時代とは異なった、しっとりと場の風景を歌い上げている哀愁のを感じるトランペットの音色。

あのArt Farmerに優るとも劣らない叙情性を持ちながら、核のしかっりしたサウンド。
聞けば、この時期、医者の家業を引退し、ミュージシャンの道に専念することにしたのだそう。

そうした彼の意欲も手伝い、その後、彼の作品が発表されるとそれをGetし続け、その味わいを楽しんで来たのですが、この作品、さすが70歳の老境を越えてのそのプレイ、持ち味のトーンにも翳り射し、作品の印象を傷つけてしまっているのではとの不安が走りながらも、今のEddie Hendersonにも接し、その年齢をどう克服しているのかを確かめてみようという気持ちから聴いてみることにしたものなのです。

それでは、老境に入った、Eddie Hendersonのサウンド、早速、耳にしていただこうかと思います。




曲は、”Together”です。
ワーン・ホーンによるしっとりした叙情味溢れる演奏。
70歳を過ぎて、さらにその音色に深みが増してきたEddieのホーン・プレイ、George CablesのピアノがそのEddieのプレイを優しく包み込み、さらにそのサウンドを美しさを引き出している様が印象的です。

この他、収められてる曲は、Eddie Henderson、 George Cablesそして、Eddieの奥様のNatsuko Hendersonのオリジナル曲を中心に Duke Pearson、Freddie Hubbard、Jimmy Heath Woody Shaw の曲と、60年代の主流派ジャズからフュージョン系のサウンドまでの楽曲が並ぶ多様な選曲。

特に、Duke PearsonやEddie と奥様相互の深い愛情が感じられる Natsuko Hendersonの安らぎある美しいバラードのプレイや、それとは裏腹のJimmy Heathの曲で繰り広げられるGary Bartzとの熱く力強いバトル・プレーが、聴きものだと思います。

70歳を越えての、それまでの集大成とも取れるこの作品。
年齢と共に深みを増し続けているその歩み、老いて私もそうありたいものだと、音楽のみならずその人生の歩みにまで深い共感を覚えてしまいました。





続いて2つ目の作品は、

佐藤允彦 Msb2.jpg


1970年代の終末、日本のピアニスト、佐藤允彦が率いたMedical Sugar Bankの1980年の作品”Msb2”です。

いささか古い作品なのですけど、この作品を選んだのは、若い時これを聴くことを諦めてしまったことに対する断腸の思い。それは..........、

1970年代の中頃、TVのサスペンス・ドラマのバックに佐藤允彦のエレクトリック・ピアノやシンセサイザーを駆使したジャズがよく使われていて、それが気に入っていた私は、常々佐藤允彦のそうした作品を手に入れたいと考えていたのですが、彼のどんな作品を聴いたらわからず、そこで当時のジャズ愛好していた仲間にそれを尋ねたのです。

ところが、当時は、エレクトリックを使うなんてそんなの本来のジャズではないというファンが多く、その時それを尋ねた友人もその類だったことから、佐藤允彦の作品なら”Palladium”やピアノ・ソロ作品の”観自在”を聴くべき、エレクトリックの佐藤允彦なんてというつれない返事で、それ以後は、私も彼の弁に従い、そうした佐藤允彦の作品を探すのを諦めてしまっていたのでした。


しかし、昨年、何気なしに新譜のリストを見ている目に入って来たのがこの作品。若き日、ドラマのバックで聴いていたサウンドのの感触を思い出し、あの時探すのを辞めてしまった自分の視野の狭さを反省、これは是非聴かねばならないと手に取り聴いてみることにしたのです。

その結果は........、

エレクトリックではあるけれど、半ばダンス・ミュージック化していた当時のフュージョン・サウンドとか異質のクォリティの高い聴きごたえのあるジャズ・サウンド。

というところで、そのサウンド、ここで聴いていただくことにいたしましょう。
曲は、この作品の最初に登場する”Oiwake”と最後の”Empei Dance”です。



まず、驚かされたのは、そのスピーディ-かつ歯切れの良いそのビート感。
当時の、日本人によるフュージョンは、ともすればそのビートがもたつきがちとなり、興をそがれるものも少なくなったように記憶しているのですが、各楽器ともそのビートと一体となって音のうねりを作り響いてくる。

曲によっては、あの伝説のWeather Report を思わせる楽曲もあるのですが、ソロ、非ソロの合間が見えにくく抽象的な印象のあるそのサウンドと異なり、その判別は明確で各楽器間のバトルや対話の様子もしっかり捉えることができる点、大きく異なっているようにも思えます。

そして、その旋律も日本人特有のわかりやすさを備えている。
特に、先に聴いていただいた”Oiwake”では、日本の原風景を宿す街道の分岐点を多くの人々が往来する、そうした様子が見えてくるようにも感じられ、日本情緒と高いパーフォマンスを備えたこのようなサウンドが、今から40年近く前に出現していたことに今更ながら驚かされました。


そして、3つ目の作品は。

Russell Malone Wholly Cats.jpg


伝統的なジャズ・ギターのスタイルを今に継承する黒人ギタリスト Russell Maloneの1995年の作品”Wholly Cats”です。

このRussell Maloneについては、これまで何回か取り上げて来ましたが、近年アンプを駆使し音創りをするジャズ・ギタリストが多い中、あくまでアンプは拡声装置として使い、ギター・テクニックでその音創りをする伝統的なジャズ・ギターのスタイルで、新たなジャズ・ギターの魅力を伝えてくれるMaloneは、私の然も好きなジャズ・ギタリストの一人で、昨年は大いにジャズ・ギターの醍醐味を楽しまさせてもらい印象に残った作品ということで、彼の比較的初期のこの作品を選ばせてもらいました。

実はこの作品を私が手にしたのは、 Maloneのギター・プレイは言うまでもないことなのですが、さらに興味を惹かれたのは、この作品でピアノを弾くとあるアーティストとの45年ぶりの出会い。

その人の名は、Larry Willis!!

この名前、それを聞いてもほとんどの方が、知らないのでは思える人なのですが、それも当然!!
彼を初めて聴いてから一度も彼の名を聞くこともなく、私自身も、その名前を忘れかけていたのですから。

そのLarry Willisのピアノ、私が彼を知ったのは1973年、彼がブラス・セクションを加えたロック・バンドの元祖であるBlood ,Seat &Tears(略して以下 BS&T)に加入したことに始まります。

そんなバンド知らないよ!!という方も多いかと思え、それがどうしたと言われるかもしれませんが、このバンド、1968年に今もアメリカのロック重鎮でご意見番のAl Kooperによって結成、それ以後、多くの有力プレヤーを、世に送り出して来た、アメリカの音楽史上大きな働きを残したバンドなのです。

その顔ぶれをざっと見てみると

弟のサックス奏者 Michael Breckerと組みThe Brecker Brothersを結成、フュージョン・シーンをリードしたトラペット奏者のRandy Brecker
Gil Evansのオーケストラ、Manhattan Jazz Quintetのメンバーとして現代を代表するトラペット奏者として知られるLew Soloff
MIes Davisのグループのメンバーとなり現代ジャズ。フュージョン ギタリストの頂点にいるMike Stern
Gil Evansのオーケストラ、Jaco Pastoriusのメンバーとなり、著名トロンボーン奏者の一人としてなったDave Bargeron
BS&Tのドラム・リーダーとして活躍、天才ベーシストJaco Pastoriusを発掘、世に送り出し、後に米コロンビア・レコードの副社長を務めたBobby" Colomby

等と、なかなかの凄いメンバー、
そのことからも、その中でプレイしていたLarry Willis、無名ではあるけど、その実力のほどが想像つくのではないかと思います。

それでは、Larry Willisを加えたRussell Maloneの演奏、ここでお聴きいただくことにいたしましょう。
曲は、”Wholly Cats”です。



Maloneの超絶技巧に圧倒されつつも、BS&Tのような大型編成のバンドではなくコンボでWillisのピアノを聴きたいと思っていた私は、彼のピアノが出て来て思わずニンマリ。

バラード・プレイでのプレイも、Maloneのギターに透明感を添えている、そのコンビネーションも聴きものです。
BS&Tを去った後は、フュージョン・シーンで活動をしていたというWillis、それまで抱いていた印象とは違った彼の優れた側面を見せられたように思います。

そして最後の曲、Maloneのギターソロによる”Yesterdays”、不協和音をまじえながらのその演奏は、この旧曲に、現代の息吹を注いでいるような。
さすが、Russell Malone!!
私ごとながら、昨年ジャズの楽しさを十分味わさせてもらった一枚でした。


引き続き大きな稔手にできた2016年、今年も、どんな作品と出会えるか、これからも、ぼちぼちと探し続けて行こうと思います。
お越しくださった皆様、本年もよろしくお願いいたします。


Collective Portrait
Track listing
1 Sunburst – Eddie Henderson–
2 Dreams  – Eddie Henderson–
3 Morning Song – George Cables –
4 You Know I Care – Duke Pearson –
5 Beyond Forever – George Cables –
6 First Light – Freddie Hubbard –
7 Together – Natsuko Henderson –
8 Ginger Bread Boy – Jimmy Heath –
9 Spring – Leszek Kułakowski –
10 Zoltan – Woody Shaw –

Personnel
Eddie Henderson -Trumpet, Flugelhorn-
Gary Bartz -Alto Saxophone - (tracks: 1 to 3, 6, 8, 10)
George Cables -Piano, Electric Piano-
Doug Weiss -Bass-
Carl Allen -Drums-

Recorded
May 12, 2014 at Sear Sound, Studio A New York City



Msb2
Track listing
1.Oiwake
2.The Topologic Linkage
3.Etude for the Category B
4.Wing-Over
5.Owlish Pacer
6.Empei Dance

Personnel
佐藤允彦&メディカル・シュガー・バンク(MSB)
佐藤允彦 (Keyboards)
清水靖晃 (Tenor Saxophone)
高水健司 (Bass)
山木秀夫 (Drums)
穴井忠臣 (Congas,Percussion)

Recorded
1980年11月17,18,19,TOKYO JAPAN



Wholly Cats
Track listing
1 Wholly Cats 7:55
2 I Concentrate On You 10:16
3 Carousel 6:47
4 Swing Low, Sweet Chariot 2:49
5 Off The Top 10:25
6 Four In One 7:40
7 After All 6:10
8 Chitlin Blues 7:38
9 Yesterdays

Personnel
Electric Guitar – Russell Malone
Piano – Larry Willis
Bass – Rodney Whittaker*
Drums – Yoron Israel

Recorded
at Clinton Studio "A" in New York on July 18,19, 1995



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tarou

こんばんは、熊ノ平駅にコメントを有難うございました。
残念ながら、この区間の電車には乗ったことが有りません、
めがね橋に憧れて少し歩いて写真を撮っただけです。
スイッチバックの電車は、箱根登山鉄道で乗ったぐらいです。

レコードは何枚か持っていますが、今は再生装置が無いので
ホコリをかぶっています。
by tarou (2017-01-09 23:09) 

ハンコック

仰る通り、Eddie Hendersonには、
Art Farmerっぽい情緒性がありますね。
Art FarmerからJAZZ耳を更に広げていくには
良いアーチストかもしれませんね。

by ハンコック (2017-01-11 20:28) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

tarouさん

貴紙の記事を読まさせていただいて、子供の頃、鉄道が好きだった私は、昔、アプト式レールの区間であった信越線の碓氷峠の区間を初めて特急列車で走ったあの時の、そこはどんな急峻で険しい場所だったのかと、車窓に釘付けとなり目凝らしてずっと眺めていた、そうした忘れかけ記憶を思い出させていただきました。

レコード埃をかぶっているということですが、旅の伴に音楽を連れ出して、いつも違う土地で聴いてみると、その土地のまた違った風景が見えてくることもしばし、一度試してみるのもいいのではと思います。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2017-01-14 16:38) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ハンコックさん

「Art FarmerからJAZZ耳を更に広げていくには良いアーチスト」、なるほどね。

若い時、Art Farmerはどちらかというと、好きでなかった私なのですが、それが変わったのは、1979年のTommy Flanaganとの来日ステージを見てからで、それがなかったらEddie Hendersonの復帰時の彼のプレーを聴いて、昔のフュージョン時代のプレーの方がよかったと思っていたかもしれない、ハンコックさんのご指摘で、そんなことを考えてしまいました。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2017-01-14 16:48) 

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