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秋の空気に映えるピアノの音;kenny Drew・Impressions,Expressions [音源発掘]

10月になりましたね。

今年の秋到来は、雨降り続きで鬱陶しい日が続く毎日で、心の内まで曇りがちにとなってしまっている方も多いのではと思いますが、そうはいえ、夜になるとどこからともなく聞こえてくる虫の音にホット一息、そこに確かな秋の訪れを感じられるようになった今日この頃。

その秋という季節、”芸術の秋”とは昔の人はよく言ったもので、何故か日常当たり前のように聴いている音楽も、一際その冴えが耳の中に響き渡り、その風味が増して聴こえてくるもの。

私もこの秋はログ友さんの影響か、ここのところ尺八の音が妙に恋しくなってしまい、この季節の風の上を静かに飛翔する藤原道山の尺八の演奏を聴きながら、日本の秋の詩情を体全体に感じ味わう機会が多くなっているのですが、それに加えてよく聴いているのが、今回ご紹介する秋の旅情を掻き立てる、この2作品。

kenny drew・impressions.jpg


kenny Drewの欧州3部作と言われる作品の中の、1988年制作の第1作目の作品、”impressions(邦題;パリ北駅着、印象)”と

kenny drew・Expressions.jpg


1990年制作の第3作目の作品、”Expressions(邦題;旅の終わりに)”。


旅の空の下、淡い哀愁の漂う女性の姿が印象的なジャケットを持つこれらの作品、共に今年7月に亡くなった日本人名ジャズ・プロデュサーの木全信氏の手によるもの。

このkenny DrewをはじめArt Blakey、Benny Golson、Chet Baker、European Jazz Trioなど、日本では最新の演奏を紹介されることの少なかった数々の名演奏家の現在を、「寛げるジャズ」「気楽に触れ合えるジャズ」そのうえで「アルバムのどこかに、聴く人の心に触れる緊張感をのこせれば・・・」という心情の下、多くの作品を制作してきた木全氏、中でもkenny Drewの今を捉えた作品群は、当時母国アメリカからヨーロッパに渡り、日本では忘れられかけていたこの名ピアニストの存在を広く世に知らしめ、大きな反響を呼んでいたことが思い出されます。

そして、そうした木全氏プロデュースのDrew作品の中でも今回選んだこの2作品は、1993年に64歳で亡くなったkenny Drew、その最晩年の演奏を捉えたもので、生涯の相棒となったベース奏者のNiels-Henning Ørsted Pedersen との互いにすべてを知りつくした二人の円熟の境地が生む緊密なサウンドが堪能できる、Drewの晩年の傑作と言われているものなのです。


それでは、円熟の境地が綴る、秋の空気をより一層引き立てるその音楽、前口上はこのくらいにして、この辺で1曲、お聴きいただくことにいたしましょう。












曲は、アルバムの表題曲”Impressions(邦題;パリ北駅着、印象)”です。

1950年代の初めには、既にバップ系のピアニストとして活動をスタートしていたにもかかわらず、母国アメリカでの評価はいまひとつだったというDrew。

かの国の人種的偏見差別に嫌気がさしていた彼は、1961年 新天地を求めてパリへ渡ってしまったのですが、この曲は、その彼が初めてパリに到着した時の様子をスケッチしたものと言われているもの。

音楽前段のどこかフランスの印象派の作曲家ドビッシーを思わせる旋律が、期待と不安の入り混じった、パリ到着直後の彼の心境を歌い上げているようにも思えます。

そして1964年に、その後の人生を過ごすこととなるからデンマークのコペンハーゲンに移住、次第に躍動感
を帯びてくる演奏は、その地で自らの音楽に目覚め、そこやって来たサックス奏者のDexter GordonやJohnny Griffinと共演しつつ賞賛を得、次第に高い評価を得て行く彼の姿が投影されているように思えます。


さて、そのDrewを私が知りお気に入りのピアニストとして注目するようになったのは、John Coltraneの作品”Blue Train”を聴いてのこと。

そこで彼のリーダー作品を探したのですが、まだ、日本では彼のヨーロッパでの活動状況は紹介されていなかった頃、アメリカでは評価の低かった彼の作品はなかなか見つからず、やっとのことで手に入れたのが、1958年のRivrside盤、”Kenny Drew Trio”だったのです。
しかしその演奏、”Blue Train”の彼のプレーからイメージしていた演奏には、なにかが足りずどうもピーン来るものがなかったことから、その後、彼のリーダー作品での出来に期待することは諦めてしまっていたのです。

しかし、それから2年後、ようやく日本で発売された、渡欧後の彼のピアノが聴ける作品(その作品はこちら→)、実はその作品、そこでリーダーを務めたJohnny Griffin目当てで手に入れたものだったのですが、聴いてみてビックリ!!

GriffinやPedersenの音は、予想通りのものだったのですが、驚いたはDrewのピアノ。
バッパーらしいブルージーな感覚の乗りのいい野性的な快速フレーズで迫ってくるのかと思いきや、どこかクラシック的なエッセンスが潜む、気品あるピアノのフレーズが聴こえて来たのです。

ヨーロッパに渡り、自己のサウンドを開花させていた???

”Blue Train”で、その良さを体感していた私は、バッパーとしての彼の姿は本来のもではなく、だからこそアメリカで評価得られなかったのであり、これこそDrewの本質ではなかったのかと、以後、彼のリーダー作品の登場を待ち焦がれるようにしまったのでした。


さて、ここでもう1曲。
今度は、第3作目の作品、”Expressions(邦題;旅の終わりに)”から、秋の空気の味引き立て味あわせてくれる、こんな曲で、この季節の味、さらに堪能していただければと思います。



曲は”Autumn in Rome(邦題;ローマの秋)”。

こちらも、クラシック音楽の雰囲気が漂う美しいバラード曲。

バッパー時代のDrewでは、この類の曲の演奏はリズムが安定せず、そのため、そのサウンドはけして心地の良いものとは言えなかったのですが、この演奏では単なる心地良さだけではなく、視覚的な旅情、空気の色さえ感じさせてくれているようにも思います。

このあたり、渡欧後、彼の中にどんな心境の変化あったのだろうかと思っていたのですけど、最近、彼が幼少期よりクラシックを学び、少年時代において、そのピアノの腕前はかなりのものだったことを知ったことから、
50年代の彼は自身の本質に気付かないまま、バッパーとしての道歩み、ヨーロッパに渡り、この地でジャズとクラシックが違和感なく結び付きジャズとしての輝きを放っていることを知ったことで、自らの資質に気付きそれを開花させた。
その結果がこのサウンドなのだと、今はそう考える事が妥当だと思うようになったのです。

さて、そうした欧州の風情を湛えたDrewのピアノ、最後の1曲は、やはり、秋と言えばこの曲。
それではその名曲、早速お聴きいただくことにいたしましょう。



曲は不朽の名曲”枯葉”。
Bill EvansやMiles Davisの演奏でも、有名なこの名曲。
Drewのそれとは一味違ったヨーロッパ・テイーストの演奏も、またいいものではないかと思います。

さて今回聴いていただいたDrew盤年の傑作。
その演奏から、秋の空気の繊細さとその微細な響きを感じていただけたでしょうか。

実は、この私、暑い時期にこの作品を聴き、あれっ、こんな出来の悪い作品だったっけと一旦は幻滅をしてしまったのですけど、この秋の季節に聴き直し、その良さを再認識し直したもの。

音楽も聴く季節を間違えてはいけない、私自身再度この作品を心行くまで聴き直し、深まりゆく秋に風の心、十二分に感じ取れればと考えています。

Impressions
Track listing
1 Impressions
2 Evening In The Park
3 Cafe Flore
4 Autumn Leaves
5 No Greater Love
6 My Ship
7 Rouge Blues
8 Morning Mist
9 Last Tango In Paris
10 The Way We Were

Personnel
Kenny Drew -Piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen -Bass
Alvin Queen-Drums

Recorded
August 1, 1988 - August 3, 1988


Expressions
Track listing
1. Autumn In Rome
2. Cathedral In Milano
3. Oboe Concerto D Minor
4. Anastasia
5. My Funny Valentine
6. Isn’t It Romantic
7. Valse Italiano
8. Sorrento
9. The Big Boot
10. Expressions

Personnel
Kenny Drew -Piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen -Bass
Alvin Queen-Drums

Recorded
May 7, 1990 - May 9, 1990



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ハンコック

この涼しい季節。
エアコンの音が聞えない静かな部屋で
夜にじっくり聴いてみたい曲ですね。
どなたかがこのLPをちぐさでリクエストされていたのを
思い出しました。
このジャケットですからすぐに覚えました。
今度リクエストしてみようかと思います。

by ハンコック (2016-10-03 18:49) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ハンコックさん

50年代ジャズなど、こういった音楽を一人部屋で楽しむ(ちょっと根暗趣味ではありますが......)には打ってつけの季節になりましたね。

そんな陽気の中、私も夏の間、聴くのがきつかった、どろどろのジャズ、この爽やかさを得たところで、毛色を変えて聴き直してみようと思っています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2016-10-11 20:13) 

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