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ドラム・ロールの音も高らかに;Live at Sweet Basil: Art Blakey and the Jazz Messengers [音源発掘]

さて、今回の記事は再びいつもに戻って、音楽のお話。

前回の記事でも最後のところで、元気が戻って来たところで、ここのところパワーをもらっているシンフォニッック・メタルのサウンドで締めくくりましたが、今回取り上げたのは、メタルでもらったパワーを年相応の乗りにして開花させてくれているジャズ作品。

それが、この音楽!!



曲は、今やジャズのスタンダード・ナンバーとなってしまった名曲、Art Blakey & The Jazz Messengersの”Moanin'”。

この曲発表前のBlakey、元々黒人たちが生み出した20世紀の音楽ジャズ、ところが、1950年代初めには、ウェスト・コートの白人たちの手によるクール・ジャズにその主導権をとられてしまっていたのを、1954年にHorace SilverやClifford Brownと共に旗揚げをして、イースト・コート・ジャズの幕開けを切り開き一躍、世の脚光を浴びるのですが、その後、盟友 Silverと袂を分かってしまたっことから、Silverは着実にその人気を伸ばしていったのに対し、Blakeyは鳴かず飛ばず状態に陥ってしまっていたのです。


そうした中、彼が再起をかけ、新メンバーで立ち上げたThe Jazz Messengersで演奏収録したのがこの曲。

当時世に出るや、ジャズの枠を超えた空前のヒット曲となり、日本では蕎麦屋の出前までもが、出前のそばを肩に乗せて自転車に乗り、口笛でこの曲を歌い走っていたというくらいの現象が起きるほどになっていたのだとか。

img048.jpg
                 

と言っても 今の方には、自転車に乗った蕎麦屋の出前と言われてもピーンとこない方が多いと思いましたので、その姿を見ていただこうと探したのがこの写真。

どうです!! まさに職人芸の世界ですよね。
このスタイルで、”Moanin'”のメロディを口笛で吹きながら走るなんて、実に粋だと思いませんか。

しかし、今これをやったなら、自転車危険運転と見なされで警察屋さんに捕まってしまうのでしょうけど。
なんとも、せちがらい世の中になってしまったものです。


話は横にそれてしまったようですけど、再び”Moanin'”!!......

そうしたジャズにしては空前の大ヒットとなったこの曲、それによってBlakeyは、当時のジャズ・シーンにおいてファンキー・ジャズのパイオニアとして再び大きな脚光を浴びるきっかけを掴むことになり、彼のThe Jazz Messengersは、その後のジャズの歴史に大きな足跡を残して行くことになったです。


さて、この”Moanin'”、初お目見えはあの名盤の誉れ高い、Blue Note 盤の同名タイトル盤の演奏なのですけど、今、ここでご聴いていただいた ”Moanin'”は、また別格の曰れのあるもの。

聴いてお分かりだと思いますが、音楽と共にその音楽に酔いしれ騒ぐ聴衆の声も聞こえてくることでお分かりだと思いますが、ライブ録音であるこの演奏、1958年、フランスはパリの Club Saint-German での様子を捉えたもので、実はこの演奏に限ってのみ、曲のタイトルは”Moanin' With Hazel ”とクレジットされている演奏なのです。


となると、追加されたWith Hazel というは、一体何なのか?
それは、女流ピアニストでシンガーのHazel Scott のこと。

と知ると、Withとあるので、ここに彼女がピアニストして参加共演しているのでは、と思われるかもしれませんが、そうではなく、彼女は単なる観客としてここに居合わせていただけ、それがどうして、”With Hazel”と冠されることになったのかと、次々疑問が湧いてくるのではないかと思います。

そこで、この演奏をよく聴いていただくと、演奏のバックからテンション高く叫び声を上げている女性の声が聞こえてくるのが分かるかと思います。

実は、この声の主が、Hazel Scott 。

音楽に陶酔し客席から奇声を上げ続けるHazel 、バンドの演奏の方も、その熱波を浴びてますます燃え上がり過熱して行く様子が聴き取れます。
そしてそのHazel、最後には興奮の頂点にまで上り詰め、感極まって”Oh Lord have merry!"(おお、主よあわれみを!)と叫び声を上げるのですが、その様子がこの録音に見事にキャッチされ、そこからこのWith Hazel のタイトルがつくことになったのだとか。
それにしても、この曲の作曲者Bobby Timmonsのピアノは圧巻。 

まさしくジャズの醍醐味を堪能させてくれる極めつけの”Moanin'”。
バンドの演奏の熱気が観客に伝わり、その乗りの陶酔感が、さらにバンドを刺激し予期不能のサウンドを呼びよせている。

この演奏で、またジャズの面白さ少しでも知っていいただけたらと思います。


さて、ここまで書いて、今回取り上げる作品はというと.................#%%

長々と、 Club Saint-German の”Moanin'”のことを書いたので、そのライブの模様を収めた”Art Blakey: At Club Saint-German”とくるのではと思われるかもしれませんが、あにはからんや。

今回取り上げるのは、この作品。

live at sweet basil art blakey & the jazz messengers.jpg


1985年3月24日 ニューヨークにあるジャズ・クラブ”Sweet Basil”でのライブを収めた”Live at Sweet Basil: Art Blakey and the Jazz Messengers” 。

私自身、Jazz Messengersは60年代初頭まで全盛期だ思い、長い間その後の彼らの演奏を聴こうとしなかったのですが、80年代に入り出現した私のお気に入りとなったアーティストの多くが、Jazz Messengers出身者であったことを知り、聴いたのがこの作品。

最近、また聴き直してみたところ、50年代60年代のサウンドとはまた異なったフレッシュさを感じさせてくれるこの作品に惚れ直し、ここで取り上げることにしたのです。

と言うところで、Blakey以外は、すべて新しい顔ぶれによるJazz Messengersの演奏で、名曲”Moanin'”、
まずはその聴き比べから始めることにいたしましょう。







土の香り漂うソウル感が横溢した1958年の演奏に対し、クールな都市空間の中で次第に熱さを増して行く現代的表情を感じさせてくれる”Moanin'”。

オリジナル・メンバーのLee Morganのトランペットに迫り越えようと果敢に挑戦するTerence Blanchardのトランペットの音が冴えわたります。

親子ほどの年の差もある年齢のBlakeyのドラムも若手に刺激され、往年を越えるかと思われる豪快さで迫ってきます。


こうした、その時代その時代に現れた有望な若手アーティストをメンバーに加え、次世代を担う存在として育て世に送り出していった、そうしたことをしたアーティストと言うと、まずMiles Davisの名が思い浮かびますが、このArt Blakey & The Jazz Messengersも、若手アーティストのジャズのメジャー、シーンへの登竜門として60年~80年代に大きな役割を果たしていたのです。

その主な出身者の顔ぶれを見てみると、

まずトランペットでは、
Lee Morgan  Freddie" Hubbard Woody Shaw Chuck Mangione Wynton Marsalis Wallace Roney
Terence Blanchard

サックスでは、
Benny Golson Wayne Shorter Branford Marsalis  Bobby Watson Carlos Garnett 

ピアノは
Bobby Timmons Keith Jarrett Cedar Walton George Cables  John Hicks Mulgrew Miller  

ベースは
Jymie Merritt  Reggie Workman Lonnie Plaxico

そしてトローンボーンは
Curtis Fuller 

いかがです、この蒼々たる顔ぶれ、60年代から現代に至るまでジャズ界を牽引して来た名プレヤーの名前がずらりと並んでいるのが見て取れます。

特筆するのは、トランペット奏者の顔ぶれ。
Miles Davisがトランペット奏者であったことから、Milesのバンドからは出ることのなかったトランペット奏者ですが、これを見ると60年代以降登場した名手たちのほとんどが、Jazz Messengersの出身者であることに気付かされます。

また、これらJazz Messengersの出身者たち、過去にArt Blakey が作編曲能力に優れたHorace Silverと決別した後、しばらく不遇をかこった苦い思い出のせいもあるのか、作編曲能力に優れたアーティストが多いこともその特徴。

先に聴いていただいた”Moanin'”のほか”This Here”などのジャズの名曲を世に送り出したBobby Timmons、そのTimmonsと共に同時期に在籍し、”Blues March ”や”I Remember Clifford”、”Whisper Not”の作曲者として知られるBenny Golsonをはじめ、Jazz Messengersの看板曲の一つである”Ugetsu”を書いたCedar Walton、

そして、

Miles Davisがその作編曲能力を評価し自己のバンドへの参加を求めながら、彼がBlakeyの下を去り自分の下に来るのを待ち続けた。
そして、彼の参加によって、Milesに4年ぶりのスタジオ・レコーディングを踏み切らさしめたという逸話が残るWayne Shorter 等々、

とあらためて、俯瞰してみると現代ジャズ界においてArt Blakeyの果たしてきた役割、今、私が贔屓にしているアーティストのほとんどの人が、その洗礼を浴びていたことを考えると、つくづくとその大きさに感慨を抱いてしまうのです。

それではこの辺で再び1985年のSweet BasilでのBlakeyとそのチュードレンたちの演奏から、
豪快なBlakeyのドラムから始まる”Jodi”を聴くことにいたしましょう。



ドラムのイントロの後に続く管楽器により歌い上げられる華麗なテーマが印象的なこの曲、60年代のフリー的要素もちりばめられたソロ・パートは、まさしく現代のジャズ。

引き継がれ歌われるソロの中でもTerence BlanchardとMulgrew Miller のソロは秀逸。
特に、 Mulgrew Miller 、この人、2013年に57歳で亡くなってしまったのですけど、強靭なタッチ繊細さが程よく調和したそのピアノ・プレイの味は、このMessengersの演奏のテンションをさらに高みへと導いているようにも感じられます。

颯爽とした煌びやかさを感じさせる若手に囲まれて、この時66歳であった御大Blakeyもそれに負けない瑞々しさで若々しいドラムプレーを聴かせてくれている。

そうえば89年頃来日した時のBlakeyを見たのですが、その歩く姿を見て一瞬これ大丈夫かと思いきや、いざドラムの前に座ると若やいだスティック捌き見せてくれた。

このプレーを聴いていて、Messengers最後のピアニストGeoffrey Keezerのいた時のBlakeyを聴きたくなりました。


Track listing
1.Jodi       - Walter Davis, Jr. / Wynton Marsalis -
2 .Blues March    - Benny Golson-
3 .Mr. Babe    - Donald Harrison-
4 .Moanin'     - Bobby Timmons-

Personnel
Art Blakey(ds)
Terence Blanchard (tp)
Jean Toussaint (ts)
Donald Harrison (as)
Mulgrew Miller (p)
Lonnie Plaxico (b) ,

Recorded
May 24 1985 at Sweet Basil Greenwich Village New York City





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ハンコック

こんばんは。
Sweet Basilでの演奏、1960年頃までの演奏とは、
大分違った雰囲気で、複雑になってきたという感じがしますね。
ShorterよりあとのJAZZ Messengersを殆ど聴いてない私には新鮮です。
なんとなくWynton Marsalisの雰囲気がしました。
ちょっと複雑で頭が良い演奏という感じでしょうか。
フュージョンと平行していた時代ですよね。
モダンジャズの流れを汲んだ80年代の演奏の代名詞のような感じがしました。
こういう意味では、JAZZ Messengersはいつの時代も
JAZZの中心にいたのだなあと改めて思いました。

by ハンコック (2016-07-15 22:13) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ハンコックさん

80年代に現れたWynton Marsalisに代表される新主流派の若手たち、優れたテクニックでこれまでにないジャズを演奏していることは分かったのですけど、あまりにも楽理的すぎてハートが感じられず、私はどうも好きになれませんでした。

ところが、このMessengersでの若手の演奏、Blakeyがバックに控えていることで、テクニック、楽理的にも優れている若手の英気がに満ちているうえに、なぜかそのハートも失っていなかった。

Milesは若手と共に新しいスタイルのジャズを創造していったのに対し、Blakeyは、若手のサウンドに、伝統的なジャズの魂を付加し新しいサウンドを創造していった。

今この作品のことを書き終えて、そんな風にBlakeyの音楽を、考えるようになりました。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2016-07-16 18:09) 

dolphy

このジャケット箱入り3枚組で持ってたけど売っぱらっちゃった 残念かも
ブレイキー ナイアガラ瀑布ですよね チュニジアの夜も好きです バンドリーダーがしっかり機能していた時代ですね 素晴らしい記事堪能しました♪(´ε` )体調如何ですか 暑中お見舞い申し上げます
by dolphy (2016-07-17 09:23) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

dolphyさん

残念なことをしましたね。

確かに、私もこの3枚セット、あまりのものオーバー・ファンクが鼻について、一時は、聴くのが嫌になった時もありましたけど。

そこで試にHazelの乗りの気持ちで共に熱くなって聴いてみたら、また別の良さが見えてきて、以来、テンションの高い時に聴き、さらに元気を培う時の、愛聴盤になってしまいました。

しかし、おっしゃる通り、今は50年代60年代にいたようなオーラを放つリーダー、少なくなりましたね。





by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2016-07-18 06:46) 

ぼんぼちぼちぼち

蕎麦屋の出前持ちのこういう様子、昔は街の風景に欠かせない一要素でやしたね。
by ぼんぼちぼちぼち (2016-07-21 14:05) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ぼんぼちぼちぼちさん

ありがとうございます。
蕎麦屋の出前持ち、昔の街の風景に欠かせない一要素。

本当にそうですね。

その、Moanin' と出前持ち、最初に、このことを評論記事に書いたのは確か、故ジャズ評論家の油井、正一さんだったと思うのですけれど、その記事を読んで以来私は、この曲を聴くと、我が家によく出前をしてくれた小学校の同級生のお父さん(お店のオーナーなのですけど)の顔を思い出し、届け物の品質を損なうことなく、片手で自転車を的確に操る、その技に憧れ迫ろうとしていた自分の子供時代を思い出してしまうようになってしまいました。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2016-07-23 20:30) 

きたろう

老年蛇銘多親父さんコメントありがとうございます^-^
きたろうが行った時は平日でしたが、数名のカメラマンが写真を撮っていました。その時、既に、蜂巣(花の落ちた後残る部分=#05の左上に写っています)が結構目立っていました。

早めに、鑑賞に行かれると良いと思います(●^o^●)
by きたろう (2016-07-28 03:39) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

きたろうさん

情報ありがとうございます。
花の見頃、そろそろ時期外れかなとは思っていたのですけど、
ここのところ予定が立て込んでいてすぐには見に行けそうないし、来年は必ずチャレンジしなけばと思っています。



by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2016-07-30 11:00) 

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