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亡き老巨匠の魂に導かれ生まれた名盤;Joni Mitchell・Mingus:本日の作品;vol.97 [デジタル化格闘記]

4月、朝の通勤時に出会う、新しいスーツを身を包みながら、どこかしっくりとしない若い人たち。
ああ新入社員の子たちだな思いながら、その初々しい姿を見ながら、年を重ねすぎた私もどこか若々しくなるような気分を感じつつ、彼らの新しい門出を祝福している、そんな季節の到来です。

そうした中、アルバム紹介記事が少なかった3月の私のブログ、そうした元気をもらった今月は、初々しい気分に触発されて再開することにしたいと思います。



その再開手始めに取り上げるアーティストは,,,,,,,,,,,,.。

ジュディ・コリンズの歌った”青春の影”、そして映画”いちご白書”の主題歌として有名なバッフィ・セントメリーの歌っていた”サークル・ゲーム”作曲者で、さらに、あのロック史上伝説となっているロック・コンサート、そのドキュメンタリー映画”ウッドストック”の主題曲の作曲者として知られるJoni Mitchell、。

と言っても、最近はその名が話題に上ることは少なく、ここに上げた曲を名を聞いても知らないという若い方も多いと思います。
そこで、今日のお話を始める前にその代表曲の中から一曲を、まずは彼女自身の歌で聴いてみることにいたしましょう。



聴いてああこの曲なら聴いたことがあると思われたかもしれませんが、この曲は彼女の初期の作品。
当初は、シンガー・ソングライターの奔りとして、またフォーク・ロックの一翼を担う存在として世に出た彼女でしたが、今日取り上げる作品は、70年代半ば以降、次第にフュージョン化していった彼女の音楽の一つの到達点ともいえる作品の”Mingus”。

Joni_Mitchell-Mingus.jpg


このアルバムのタイトルとなっている”Mingus”とは、ジャズ史上、その巨人の一人として名が数えられているコンポーザーでベーシストのCharles Mingusのこと。

この作品、ミンガスが、その晩年親密な交友関係を結んでいたミッチェルに、シンフォニー・オーケストラを加えたミンガスのコンボの演奏をバックに、ミッチェルがT.S.エリオットの「フォー・カルテット」を朗読させるという企画を持ち出しことに始まったもの。

しかし、その企画は、当時筋萎縮性側索硬化症という難病に侵されていたミンガスの健康上の問題もあったのか、結局お流れにになってしまい、替わってミンガスが曲を書き、ミッチェルが詩を書いて唄うという企画に変更され制作されたのがこの作品なのです。

joni mitchell & mingus.jpg


こうした経過で制作が開始されたこの作品、ところがミンガスは1979年1月、その完成を見ることなくこの世を去ってしまいます。
そして、そこに収められた曲は、ミンガスとミッチェルの共作によるもの4曲、ミッチェルの作曲・作詞によるもの2曲となり、そのほかミンガス夫人により録られた、生前のミンガスの日常ににおけるさりげない会話の様子が、それぞれの曲の間に5つほど収められた、図らずもミンガスを追悼作というべき内容になってしまったものなのです。

中でも、ミッチェルの作曲・作詞による2曲は、生前ミッチェルの音楽を気に入り愛したというミンガス、その天国に行ってしまったミンガスに、その音楽を精一杯と届けるようとするかのような、ミッチェルの気迫溢れるプレーには、巨匠と過ごした貴重な時間を偲ぶ思いと、彼女の深い哀しみの心が感じられ、このアルバムの中でも強い印象ものとなっています。

また、5つの何気ないミンガスの日常を捉えたトラック(Track listingの (Rap)とある部分)には、いつもどこかに怒りの心が顔を覗かせているような気難しさをを感じさせるこの巨匠の、子供のような無邪気な一面が垣間見え、そこに彼の無限の優しさを持った彼本来の姿を発見するのです。

そうした音楽だけではわからない、ミュージシャンの生の心にも触れるることのできるこの作品、聴けば聴くだけど、毎回違った楽しみ方を発見できる、他には味わえない格別味持っているように思えるのです。


さてその作品の中から最初の一曲、どの曲も大変個性的で捨てがたく、手始めにどの曲をお届けするかずいぶん迷ったのですが、やはりここはミンガスの代表曲からということで。

ミンガスが、偉大なるテナー・サックス奏者レスター・ヤングを偲んで、彼の死後2か月後に制作したアルバム”Mingus Ah Um”で発表したレスターに捧げた名曲、ロック・ギタリストのJeff Beckの演奏でも知られる”Goodbye Pork Pie Hat”から始めることにしたいと思います。






ミンガスの書いた曲に、ミッチェルが詩を書き歌ったこの演奏、ミッチェルはその詩の冒頭で”When Charlie Speaks of Lester”と唄っていますが、その中のミンガスのファースト・ネームのCharlieという呼び方、その呼方について生前ミンガスは『俺をチャーリーと呼ぶな、チャールズと呼べ』と言っていたのですが、それにも関わらず、ミッチェルにはチャーリーという呼びかけを許している。

そのことは、ミンガスとミッチェル、その二人の心を許しあった親密な関係が窺え、ミッチェルをしてミンガスの追悼をするに然もふさわしい人物であることを物語っているように思えます。

また、そうしたことからこの演奏も、ミンガスのレスターへの鎮魂歌が、ミッチェルの手によって深い敬愛の念を込めたミンガスへの鎮魂歌へとなっている、そのように感じられるのです。

それにしてもここでのミッチェルのヴォーカル、それまでのけだるさにブルーな味が加わり、ジャズ・ヴォーカルとしても十分な聴き応えのあるものになっている、あらためて彼女の卓越した歌唱力を知り得たように思います。


そしてこの演奏、さらに特筆するは、ミッチェルの歌に加えそのバックを務めている演奏陣の豪華さ。

ウェイン・ショーター(ss)、ハービー・ハンコック(key),ジャコ・パストリアス(b)、ピーター・アースキン(ds)という、キーボードがジョー・ザビヌルからハンコックに変わった、伝説のフュージョン・バンドのWether Report
というべきという物凄い布陣。

その素晴らしい演奏、とりわけウェイン・ショーターのソプラノ・サックスの響きは、控えめながらこの演奏にミステリアスな雰囲気をもたらしている、ショーターのベスト・パーフォマンスの一つだと言われているもの。

そしてジャコ!!

この作品の全編に参加しているこの天才ベーシストは、その有り余る才能を駆使し、この作品に他に類例を見ることできない個性と深遠さをもたらしている、ある意味ジャコの作品ではないかと思わせるほどのプレーを聴かせてくれているのです。


そこでそのジャコ、次にミッチェルと二人で演奏が聴けるこの曲で、広大な音空間を飛翔する二人のプレーをお楽しみください。



曲は、ミッチェル作詞作曲の”God Must Be A Boogie Man”
あたかもオーケストラのごとき広がりを感じさせるジャコのベースと、ミッチェルは、ギターの弾き語りによる演奏。

ミッチェルのギターとジャコのベースが互いに呼応しながら築く摩訶不思議な音世界。
この音でと思われる伴奏を背景に、淡々と唄い語りかけるミッチェル。

これこそ、この二人であるからこそでき得たサウンドではないか思えて来ます。




晩年は、ベースを弾くこともできず、車椅子の生活だったというミンガス。
しかし、その音楽にかける情熱は、その死の直前まで衰えることはなかったということが、この作品から感じられます。

そうしたことからこの作品、そんなミンガスの魂の燃えに導かれ、メンバー全員がその力を極限以上に発揮した、老巨匠への最高の捧げものであるように思えるのです。

そして、その底流に流れる満ち溢れる敬愛の念と深い友情の絆が、聴き手の心を揺さぶりつつ惹きつけて行く、しっとりした感動がここにあるように思います。


mingusmexico.jpg


Track listing
1. 「Happy Birthday 1975」 (Rap)
2. 「God Must Be A Boogie Man」 Mitchell Mitchell
3. 「Funeral」 (Rap)
4. 「A Chair in the Sky」 Mitchell Mingus
5. 「The Wolf that Lives in Lindsey」 Mitchell Mitchell 6:33
6. 「I's A Muggin」 (Rap)
7. 「Sweet Sucker Dance」 Mitchell Mingus
8. 「Coin in the Pocket」 (Rap)
9. 「The Dry Cleaner from Des Moines」 Mitchell Mingus
10. 「Lucky」 (Rap)
11. 「Goodbye Pork Pie Hat」 Mitchell Mingus


Personnel
Joni Mitchell (Guitar, Keyboards, Vocals)
Charles Mingus (Vocals)
Wayne Shorter (Saxophones)
Herbie Hancock (Keyboards, Acoustic Piano)
Jaco Pastorius (Bass, Brass Arrangement)
Peter Erskine (Drums)
Don Alias (Congas)
Emil Richards (Percussion)

Recorded
1978-1979 at A&M Studios, Hollywood and Electric Lady Studios, New York

DSCN9508.JPG



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ミスカラス

ジャコ・パストリアスの初レコーディングって、確か・・マイアミ・TKソウルのリトル・ビバーのパーティダウンの曲だったんですよね。その後もの凄い出世しましたけど・・なんかの偶然ですね。リトル・ビーバの曲、パーティダウンじゃないけど今日の記事で取り上げたんですが・・・
by ミスカラス (2013-04-07 21:56) 

老年蛇銘多親父

ミスカラス さん

そちらもジャコがからんでましたか。
それにしてもジャコ、・マイアミ・TKソウルのリトル・ビバーのパーティダウンの曲、どんな風に演奏していたのでしょうかね。

この作品のような音の広がりとハーモニーが聴こえるベース、だったとしたら、面白いですね。
by 老年蛇銘多親父 (2013-04-08 21:27) 

TAMA

お久しぶりです!
初めて「いちご白書」を京成千葉駅の映画館で観た時は衝撃受けました!
なんと「エルヴィス・オン・ステージ」と二本立てだったんですが、
「いちご白書」にすっかり引き込まれました(^_^;)
「サークルゲーム」は今でも良く頭の中で鳴ってます。
Joni Mitchellが作曲だったんですね。
知りませんでした。
「青春の影」もなつかしい♪
by TAMA (2013-04-13 00:41) 

老年蛇銘多親父

TAMAさん

お元気でよかったです。
最近は、TAMAさんのグチとも感じるブログが見れなくなって、ちょっと寂しいですね。
それにしても、お元気でよかった。

サークル・ゲーム、映画を見るより先にこの曲を知っていたのですけど、後に映画を見た時、学生たちが歌うジョン・レノンの”平和を我等に”方が印象に残ってしまいました。

今でも、私のように学生運動真っ只中世代には、あの映画の衝撃は自分自身に重なってくる部分があるのを感じます。





by 老年蛇銘多親父 (2013-04-14 19:45) 

ituki

すっかりコメントが遅くなってしまったんですが[汗汗]
なんて書こうか、難しいなぁと思っていました^^;

ずっとこのアルバムを聴いていて、ほんとに素晴らしいアーティストだなと、聴けば聴くほど彼女の才能の豊かさに驚かされるといった感じでしょうか。


最初聴いた時は、つかみどころがない難解な曲って思いましたが、なぜかWhen Charlie ~♪が頭の中ぐるぐる・・・(笑)

こんな楽器の楽譜のようなメロディーラインのヴォーカル、よく歌えるなぁとか、でもこの不思議な雰囲気がまた魅力なのよね~とか色々考えながら聴いていました。

ミッチェルのギターも素晴らしく、男性的な響きがとてもかっこよくてすっかりファンになりました^^[ラブラブハート]

豪華なバックの演奏も、ミッチェルの歌の邪魔をしない様に不思議な雰囲気を壊さない様に要所要所に上手く入ってそれがまたいいんですよね~♪

ジャコはミッチェルと相性がいいですよね。音楽性が似てるのかな。最高のコンビ!

ミッチェルは絵の才能も素晴らしいみたいですね[ぴかぴか]
このアルバムのジャケット、最後の絵もきっと彼女の作品ですね。
天はニ物を与えたなり(笑)
by ituki (2013-05-09 01:36) 

老年蛇銘多親父

イッチ―

よく聴きこんだ様子のコメント、大変よくこの作品の良さを魅力を捉えているなと思いました。

「最初聴いた時は、つかみどころがない難解な曲」、確かにそうですね。

私がこのアルバムを最初に聴いたのは30年ほど前のことですけど、その時は私もその良さがまったくわからなくてね、ずっとお蔵入りなっていたのですけど.........。

このアルバムの良さが分かったのは3年ほど前、ミッチェルの80年頃のLiveをTVで見てからのこと。
このLive、バックがジャコ、パット・メセニー、マイケル・ブレッカーという凄いメンバーでね、そうしたすごい連中の中でもさも輝きを放っていたミッチェルの姿に驚かされてからというのが真相なのです。

このアルバムジャケットの絵と最後の病床のミンガスの絵、おっしゃる通り彼女の作品です。

音楽は、最初聴いた時以来お蔵入りしてしまいほとんど聴かなかったのですけど、このレコード・ジャケットの絵は好きで、よく取り出して見ていました。

彼女の絵、他にも見たのですけど、これもまたいいのですよね。
本当に凄い才能の持ち主だと思います。

というところで、ミッチェルのアルバム”Hejira”、こちらもなかなかいいのです。
よければ、一度聴いてみてください。


https://www.youtube.com/watch?v=wQPB_HAQyB4

by 老年蛇銘多親父 (2013-05-09 06:14) 

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